研究概要 |
1991年に血清脂質を測定した,東京都小金井市(都市部)の65歳以上の男性183名,女性221名および1992年に血清脂質を測定した,秋田県南外村(農村部)の男性294名,女性433名を対象とした.対象に対し健康調査を実施し,静脈血を採取した.同時に,身長,体重,皮脂厚,体脂肪率,血圧および咀嚼能力を測定した.また,血清脂質の関連要因として,既往歴,現病歴,服薬状況,食品摂取頻度,身体活動,飲酒,喫煙に関する聞き取り調査を行った.血清総コレステロールは酵素法にて,HDLコレステロールはリンタングステン酸沈殿法により測定した.総コレステロールおよびHDLコレステロールの,性,年齢別分布を都市部および農村部において比較した.また,初年度との比較が行えた,小金井市の男性121名,女性126名および南外村の男性184名,女性299名について,血清脂質の縦断変化を検討した.さらに,血清脂質の変化量を従属変数とし,初年度の血清脂質の値を共変量とした多重分類分析を行い,縦断変化の関連要因を検討した.平均総コレステロールは,南外村では男性175.7mg/dl,女性200.1mg/dl,小金井市では男性200.0mg/dl,女性233.3mg/dlと農村部で低く,南外村の男性の46.4%,女性の11.2%が160mg/dl未満であった.縦断変化では,両地域とも各年齢層で総コレステロールの低下を認めた.総コレステロールの変化の要因では,体重の変化量が有意であり,体重の減少が大きいほど,総コレステロールの低下が大きかった.また,南外村の女性では,咀嚼能力が高いほど,総コレステロールの低下が抑制されていた.HDLコレステロールには有意な縦断変化を認めなかった.本研究では,加齢に伴う総コレステロールの低下が明らかとなり,農村部では,コレステロールの低下を予防する介入の必要性も示唆された.
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