本研究は、訪問看護・在宅診療を受けている在宅要介護老人とその家族(介護者)を追跡調査し、患者とその介護者の身体的精神的状況の経時的変化を調べ、その変化に関連する要因を検討することを目的とする。平成10年度の研究では、平成9年度の初回調査対象者(患者とその家族19組)を追跡すると同時に、初回調査実施後に新たに訪問看護・訪問診療の対象となった患者・家族(16組)についても新規対象者として追跡した。初回調査対象者(19名)のうち、半年後の第2回調査で再調査が可能であった者は8組で、一年後の再調査でも追跡が可能であった者は6組であったが、身体的精神的状況の大きな変化を捉えることはできなかった。一方、介護者では、身体的精神的状況の変化は半年毎の観察でも把握することができ、約半数で体調悪化や介護負担感増強が報告された。この理由として自分の身体の変化が、体調悪化と負担感増強の両方においてほぼ全員で訴えられ、自分の気持ちの変化をその理由として挙げていた者も少数いた。また、介護者の体調悪化の理由として被介護者の病状変化を挙げた者は一人もいなかったが、介護負担感増強については理由として挙げていた者が少数いた。従って、今回の調査結果より、在宅ケアを支援する訪問看護・訪問診療では、患者の病状把握はもちろんのこと、介護者についても定期的に健康管理がなされる必要があることが示唆されよう。本研究では当初3-4ヶ月毎の再評価を予定していたが、初回追跡患者の追跡開始後3-4ヶ月では身体的精神的状況の変化は認められなかったため、観察間隔を半年毎に延長して、変化を捉えようとした。しかし、観察期間を延長したところで追跡可能であった患者の状況にはほとんど変化がなく、その一方で急性疾患発症によって入院して脱落群を多く生じる結果となってしまった。要介護高齢者の追跡研究は、健常集団とは異なった研究デザインが必要である。
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