研究概要 |
本年度,現在までに成人の急死例2例,乳幼児突然死例4例の解析を行って以下の結果を得た. 1.成人急死例 1例に胸腺の肥大が認められ,胸腺細胞のフローサイトメトリーによる解析を行ったところ,胸腺細胞分化の異常が認められた.すなわち,胸腺細胞のCD4陽性細胞/CD8陽性細胞比が著明に増加し,さらに3カラー解析によってbcl-2発現を各サブセットで解析したところ,通常double positive細胞で認められるbcl-2のdown-regulationがおこっていないことが判明した.すなわち,胸腺の肥大が,このbcl-2の異常なregulationによってもたらされている可能性が示唆された. 2.乳幼児突然死例 Down症候群の1例を除く,いずれの症例においても,胸腺は著明に肥大し,組織学的に皮質の肥大が顕著に認められた.末梢リンパ節においても,腫大傾向が認められ,充分に発達した2次リンパ濾胞を持つ充実した皮質領域を認めた.Down症候群の1例では,例外的に胸腺はむしろ退縮しており,末梢リンパ節においては,皮質の発育が悪く,傍皮質領域の相対的な充実が認められた.解剖症例ではないが,心疾患を合併したDown症候群の手術例の末梢血リンパ球機能を解析したところ,mitogen刺激で多量のIFN-γの分泌が認められ,解剖症例の解析とあわせ,Down症候群では細胞性免疫優位である可能性が示唆された. 以上の結果により,成人及び乳幼児突然死には胸腺の形態的及び機能的異常が関与していることが示唆された.今後さらに症例を重ね,胸腺内細胞分化と突然死との関連を検討する方針である.
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