平成7年1月に起こった阪神淡路大震災を契機として、法医学領域においても挫滅症候群の重要性が再認識されているが、1941年に始めてこの症候群を報告したBywatersは、その病態へのミオグロビンの関与を指摘した。私はこれまで一貫して行ってきたミオグロビンに関する法医学的研究の一環として、「挫滅症候群におけるミオグロビンの毒性に関する実験的研究」に着手した。 本研究では実験動物をウサギとした。これまでに、ウサギ骨格筋からの高純度ウサギミオグロビンの抽出及び精製方法を確立し、本研究に必要なウサギミオグロビンの大量抽出並びに精製を終えた。また抽出したウサギミオグロビンを抗原、ヤギを免疫動物として抗ウサギミオグロビン抗体を作製した。一方、市販の抗ヒトミオグロビンモノクローナル抗体とウサギミオグロビンとの交差反応性の検定を行い、一部の市販抗ヒトミオグロビンモノクローナル抗体がウサギミオグロビンのエンザイムイムノアッセイ系の確立に利用可能であることを確認した。現在は、骨格筋挫滅後の血中・尿中ミオグロビン濃度定量に必要な、ウサギミオグロビンのエンザイムイムノアッセイの条件を確立しつつある。具体的には、独自に開発したヒトミオグロビンのエンザイムイムノアッセイの原理に準じたダブルサンドイッチ法と、今回作製したヤギ抗ウサギミオグロビン抗体のF_<ab>に酵素標識を行い、これを用いたサンドイッチ法によるアッセイ系との両者について検討中である。また作製したヤギ抗ウサギミオグロビン抗体を用いた免疫染色によって、ウサギにおけるミオグロビンの組織分布についても検討中である。
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