1.急性覚醒剤中毒ラットにおける脳内カテコールアミンニューロンの変性に興奮性アミノ酸が関与していることを以前明らかにした。今回は覚醒剤による逆耐性現象の形成及び発現に興奮性アミノ酸が関与していることを免疫組織化学的に調べた。 2.ラットに覚醒剤(メタンフェタミン)5mg/kgを2、3日おきに5回、腹腔内に投与する。この操作によりラットには確実に逆耐性現象が形成されることは以前からの実験により明らかである。覚醒剤投与の際に、興奮性アミノ酸系NMDAレセプターアンタゴニストであるMK-801を前投与した群と非投与群とに分けた。MK-801を前投与することにより逆耐性現象の形成がブロックされることも以前の研究で明らかになっている。最終の覚醒剤投与より24時間後にラットを深麻酔下に灌流固定後脳を摘出し、摘出脳を凍結後ミクロトームにて薄切し、切片に対し、一次抗体にanti-GAP(Growth-associated protein)43及びanti-MAP2(Microtuble-associated protein 2)を用い、二次抗体にはanti-mouse monoclonal IgGを用いて、ABC法に則り免疫染色を行った。 3.その結果、MK-801非投与群(逆耐性群)では、線条体及び前皮質部においてMAP2の染色性の低下が見られ、カテコールアミン神経終末の変性が示唆された。一方でGAP43の染色性は昂進しているように思われた。MK-801投与群(非逆耐性群)では、MK-801非投与群(逆耐性群)と同様に、線条体及び前皮質部においてMAP2の染色性の低下が見られ、カテコールアミン神経終末の変性が示唆されたが、一方でGAP43の染色性は低下していた。これらのことから、逆耐性形成時には神経可塑性が昂進していることが示唆され、覚醒剤による逆耐性現象のメカニズムを解明することが、記憶のメカニズムを明らかにすることに大きく貢献できる可能性が明らかとなった。 4.来年度はこれらの結果を追試し、免疫組織像を定量化し、実験をまとめる予定である。
|