研究概要 |
本年度は,我が国で使用されている向精神薬のうち、ガスクロマトグラフィーによる分析に適さないか、又は使用頻度の高いベンゾジアゼピン系薬物10種類、フェノチアジン系薬物6種類及び三環系抗うつ薬5種類についてキャピラリー高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析条件の検討を行った。キャピラリーHPLCによる各薬物のクロマトグラムは、いずれもシャープなピークを示し、検量線は2.5-500ngの範囲で直線性が得られた。検出限界はいずれの薬物も10ng以下であり、治療レベルでの分析が可能であることが示唆された。構造の類似した薬物についても移動相の組成やグラジエント条件を変化させることにより分離が可能となった。ヒト血清からの薬物の抽出には固相抽出法を用いたが、一般に用いられているC18カラムは不純なピークを多数出現するため、キャピラリーHPLCによる分析では適さないことがわかった。そこで、固相抽出条件を詳細に検討したところ、ベンゾジアゼン系薬物及び三環系抗うつ薬についてはC8カラムが、フェノチアジン系薬物についてはC2カラムが適しているとの新知見を得た。ヒト血清からの各薬物の回収率も80%以上と良好な結果が得られた。以上の結果をふまえたうえで、今後、多種類の向精神薬の一斉分析法を確立し、医薬品の中毒の原因究明に役立てたい。
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