本年度は、我が国で使用されている向精神薬のうち使用頻度の高いペンゾジアゼピン系薬物およびフェノチアジン系薬物について一斉に分析する条件の検討を行った。本研究で用いたキャピラリー高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、最大500μlまで注入可能なカラムスイッチング装置も付属されており、多種類を分離よく高感度に分析することができた。濃縮過程にはODS-UG-15/30(0.5×15mm)、分析過程では300 ODS-HG-5(0.3×250mm)を用い、0.1M酢酸アンモニウム緩衝液-アセトニトリルのグラジエント溶離で分析を行った。検出にはUV検出で行い、吸収波長を254nmとした。各々の薬物のクロマトグラムはシャープなピークを示し、良好な直線性と再現性が得られた。ヒト血清からの薬物の抽出には削年度の研究結果をふまえ、C8固相抽出用力ラム(ポンドエルート)を用いた。その結果、従来の方法に比べ、夾雑ピークの少ないものとなった。また、各薬物の回収率は80%以上と極めて良好であった。検出限界はいずれも10ng以下であり、本システムの分析は治療レベルでも可能であることが示唆された。 本システムは試料の全量をスプリットすることなく質量分析器(MS)に導入できる。今後、本研究の結果をいかし、キャピラリーHPLCとMSとを接続したシステムを用いて高感度微量分析を行う予定である。
|