法医剖検例における覚醒剤中毒者の心臓における洞結節及び房室結節を中心とする刺激伝導系について、覚醒剤使用の経験がない症例を対照群として、ヘマトキシリン-エオジン(HE)染色及びエラスチカ・マッソン(EM)染色について形態学的に観察したところ、対照群には明らかな変化を認めなかったが、覚醒剤中毒群においては刺激伝導系の細胞の形態的変化が認められ、一部変性している細胞が観察された。従来、覚醒剤中毒においては心筋細胞の変化が知られていたが、特殊心筋おいても変化が起こることが明らかとなった。 以上のことから、覚醒剤中毒者の刺激伝導系の特殊心筋細胞には何らかの原因によって、形態的変化及び変性が起こることが明らかになったことから、これらの変化が覚醒剤中毒者の死亡を引き起こす要因のひとつになっている可能性が考えられる。また、覚醒剤の作用のひとつとして刺激伝導系の細胞に影響を与えると思われることから、次年度においては、この変性の原因について、免疫組織化学的手法を用いて、DNAの断片化やアポトーシス関連蛋白質の発現を中心として検索する予定である。
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