研究概要 |
筋組織の中で特に心筋について,そのミトコンドリア(mt)DNAにみられる,特定領域4,977bpの欠失と年齢との関係を検索した.材料は当教室の法医剖検例のうち,死因に心臓突然死を含まない症例で,生後2ヶ月から91歳で各年齢層に広く分布している46例の心筋組織50〜100mgを材料とした.DNAは定法に従いプロティナ-ザK/フェノール・クロロホルム法で抽出した. まず,心筋mtDNAの欠失の有無を検索した.PCR法によってATPase8とND5間の4,977bpの欠失の存在について,242bpの増幅産物が得られるように欠失領域を挟むプライマー・ペア(L828及びH1349)を設定した.一方,欠失領域を含まない272bpをターゲットとしたプライマー・ペア(L62及びH85)でPositive controlの増幅とした.Positive controlの増幅が認められることを確認し,引き続き欠失領域の増幅の有無によって欠失の有無を判定した.この際,アガロースゲル電気泳動/エチジウム・ブロマイド染色で増幅バンドが観察されたものを「欠失が存在する」と判定した.さらに心筋mtDNAの欠失量の検索を行った.前記の欠失検索用あるいはPositive control用の増幅産物に対して,塩基配列の同じプライマー・ペアで増幅され,約20%サイズの大きいDNA competitorを作製しCompetitive PCRを行った. これまでで,年齢と心筋mtDNA欠失の存在については,欠失存在群が欠失非存在群に比して,年齢が有意に高いことが認められた.一方,年齢と心筋mtDNAの欠失量については,欠失量が極めて少ないものの中にCompetitive PCRで増幅産物が検出できなくなるなど定量する上でいくつかの問題点があり,検量線は作製できていない.
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