研究概要 |
ABO血液型抗原の組織特異的発現の調節機構を解明するために我々はまずそれらの前駆体糖鎖であるH型糖鎖の発現を決定している2種のalpha(1,2)fucosyltransferase遺伝子(FUT1,FUT2)に関して、それらの遺伝子のmRNAの5'末端ならびに3'末端をRapid amplification of cDNA end(RACE)法を用いて決定した。その結果、FUT1は少なくとも三ヵ所の異なった5'末端をもちalternative splicingによりさまざまなisoformのtranscriptが組織特異的に発現していることを同定した(Koda et al.,1997,Biol.Chem.,vol.272,7501-7505)。またこの遺伝子のゲノム構造を決定し、そのプロモーター領域もクローニングし、ルシフェラーゼ遺伝子とのfusion constructを作製してtransient expression studyによりそのプロモーター活性を測定した。FUT2に関してはmRNAの全長を5'-並びに3'-RACE法を用いて決定した。その結果、FUT2はFUT1と異なりさまざまな細胞で単一の転写開始点をもつことが示された。さらにプロモーター領域を含む全genomeシークエンスも同定しFUT1同様そのプロモーター活性を測定した。(Koda et al.,1997,Eur.J.Biochem.,vol.246,750-755)。さらに我々はFUT1,FUT2を共にnull alleleとしてもつインド人のボンベイ型個体についてこれらの遺伝子の解析を行った。その結果FUT1については725番目のヌクレオチドのTからGへのミスセンス変異を、またFUT2に関してはそのタンパク翻訳領域の全欠失を見い出し、それらが2種のalpha(1,2)fucosyltransferaseの不活化に関与していることを示した(Koda et al.,1997,Biochem.Biophys.Res.Commun.,vol.238,21-25)。
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