研究概要 |
研究目的:炎症細胞に発現するG蛋白質連関受容体(PAF受容体等)は三量体G蛋白質、Src型チロシンキナーゼを介して起炎性を発揮する。本研究では炎症の諸機能にSrc型キナーゼがどの様に関与するかを考察した。研究成果:1)[Ca^<++>]i上昇、顆粒分泌におけるSrc型キナーゼの寄与を解析するためにマスト細胞モデルRBL2H3細胞株にSrc型キナーゼの抑制分子C-端末Srcキナーゼ(Csk,gain-of-functionCsk変異体(mCsk),dominat negative Csk変異体(mCsk(-))を発現させ基底状態Srcキナーゼ活性を多段階に調節した細胞を作成した。これらを用いてi)[Ca^<++>]i上昇,顆粒分泌の開始がSrcキナーゼ抑制によって遅延することii)Srcキナーゼ抑制によって[Ca^<++>]i上昇、顆粒分泌の持続が予想とは逆に高度に延長すること,を見出した。即ちSrc活性の抑制は反応終結シグナルの生起を阻害し逆説的に総反応性を増大させる。これは活性化シグナル分子の不調が逆に過大な反応を惹起する例であり、新たな炎症増悪機構を示唆する。現在反応終始の分子機構を検索している。2)同細胞群を用いて細胞接着,接着班形成,遊走におけるSrc型キナーゼの寄与を解析した。さらに活性型Src型キナーゼの共発現によって各Src型キナーゼの特異的な寄与を検討した。その結果接着班形成,遊走にはSrc型キナーゼが必須であること、Lynの活性化がこの過程に十分であること、c-SrcはLynを代替しないことを見出した。3)Fcγ受容体を介する貧食機構におけるSrc型キナーゼの関わりを知るためにRAWマクロファージ細胞株にCsk、Csk変異体を発現させ、貧食にSrc型キナーゼが必須であることを示した。上記の手法でLyn,Hck活性化が貧食に十分なシグナルを送るが、c-Src活性化では代替し得ない事を発見した。これらの結果からSrc型キナーゼ群の機能分担が推察され、炎症の分子機構に新たな洞察を与えた。
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