我々が単離したラットMAdCAM-1 cDNAを発現ベクターpCDNA1にサブクローニングし、これをヒト腎由来細胞株293細胞へ遺伝子導入し、ラットMAdCAM-1発現細胞を作製し、さらにその安定発現株を樹立した。いっぽう遺伝子組み替え技術によりラットMAdCAM-1の細胞外部分とヒト免疫グロブリン(Ig)定常領域との融合蛋白の発現ベクターを作製し、大量のMAdCAM-1-Ig融合蛋白を回収できた。こうして作製したラットMAdCAM-1組み替え蛋白はリガンド結合能にマウスとの間で重複性があり、マウスのリガンド発現細胞であるTK-1細胞と有意に結合できることが確認できた。 続いて、MAdCAM-1-Ig融合蛋白を抗原として抗ラットMAdCAM-1モノクローナル抗体を作製した。抗体は組み替えラットMAdCAM-1-Ig融合蛋白との結合性を有することを指標にクローニングした。その結果12種の接着阻害抗体と1種の非阻害抗体が樹立できた。これら抗体の間には一部に反応交差性が認められたが、明らかに交差しないものも存在した。また1種類の抗体は免疫組織法によりヒト腸間膜リンパ節の染色性が確認でき、ヒトとの交差性が存在することが明らかになった。これら複数の抗体を使い分けながら、今後ラット組織での発現分布や疾患モデルラットでの発現解析や投与による疾患修飾実験を行っていく予定である。 以上の検討とは別にラット遺伝子の構造、制御領域の検討も行ったところ、ラットMAdCAM-1遺伝子はマウスと同様に五つのエクソンから成り、そのスプライシング部位もほぼ同じであった。しかしマウスのようなスプライシングアイソフォームは存在しなかった。制御領域に関してはマウスと同様にNF-kB結合領域とTATA box配列が存在したが、相違する配列も多くその特殊な発現制御を理解するにはさらに深い検討が必要であると思われる。
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