国外の研究協力者の手を借りて、ヒトHLADRB^*0401を持つDR4トランスジェニックマウスを作成した。DR4は、いわゆるシェアード・エピトープを持ち、慢性関節リウマチ患者に多いHLAであるが、このマウスに、関節炎を含め特に病的な形質は認められなかった。このマウスの末梢T細胞リセプター(TCR)遺伝子レパトワの検討したところ、もとのバックグラウンドマウスと比べてTCRBVレパトワ、TCRBJレパトワともに異なっていた。そこで、レパトワ形成にシェアード・エピトープが重要な役割を果たしていることがわかった。次に、このマウスをHLADB4シェアード・エピトープ由来のペプチドで免疫したところ、当該ペプチドに対する抗体産生が認められ、シェアード・エピトープを持つ個体でも、シェアード・エピトープ由来ペプチドに対する寛容が成立していないことが見出された。 さらに、この研究を発展させて、この末梢T細胞リセプターレパトワがいかなる遺伝因子によって決定されているかを検討するために、ヒト胸腺細胞のTCRレパトワ解析を行った。同一人から胸腺CD4-CD8-T細胞、胸腺CD4T細胞、胸腺CD8T細胞、末梢CD4T細胞、末梢CD8T細胞を分取し、それらのT細胞のTCRレパトワを比較した結果、レパトワ形成には、遺伝子再構成が重要な役割を演じるとともに、胸腺および末梢での抗原刺激がこれを修飾することが明らかとなった。
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