研究概要 |
【目的】申請者は,カルシウム依存性プロテインキナーゼII(CaMKII)が転写因子NF-ATおよびAP-1の活性抑制を介しIL-2遺伝子発現を抑制することを報告した。本研究では,このうちのCaMKIIによるAP-1転写活性抑制の機序を解明するため,AP-1蛋白c-junのリン酸化へのCaMKIIの影響を検討することを目的とした。 【方法】Jurkat細胞(CaMKII遺伝子導入群とベクターのみを導入した群)にc-Jun発現ベクターを同時導入し24時間後,^<32>p-正リン酸で3時間標識し,その後PMAで15分間刺激する。その後,抗c-Jun抗体を用いc-Junを免疫沈降させ電気泳動で分画する。c-Junを分離後,tryptic phosphopeptide mappingを行う。各群間でc-Junのリン酸化ペプチドの状態を比較検討する。 【結果】ベクターのみを導入したJurkat細胞より得られたc-Jun蛋白のtryptic phosphopeptide mappingでは,無刺激の状態に比較してPMA刺激ではN-末端蛋白を含むペプチドのリン酸化が増強していた。一方,CaMKIIを遺伝子導入し過剰発現させたPMA刺激Jurkat細胞より得られたc-Jun蛋白のmappingでは,N-末端の蛋白リン酸化部位を含むペプチドのリン酸化の程度が減弱していた。したがって,CaMKIIはc-JunのN-末端に存在するリン酸化部位のリン酸化の程度を低下させることによってAP-1の転写活性を抑制すると考えられた。
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