研究概要 |
【方法】(1)教室に自己抗体の検索依頼のあった1011例(PM/DM 102;SLE380;強皮症(SSc)180;慢性関節リウマチ(RA)56;重複症候群(OL)94;特発性間質性肺炎(IIP)57;関節痛,皮疹を有する症例142例)を対象とした。(2)抗ARS抗体の検索:患者血清中の自己抗体検索には,LernerとSteitzに準じ,免疫沈降反応で調べた。そのため,核酸成分の分析には^<32>P-燐酸標識HeLa細胞抽出物,蛋白成分の分析には^<35>S-メチオニン標識HeLa細胞抽出物を用い,抗ARS抗体の検索を行った。(2)同抗体の臨床意義の検討:同抗体を免疫学的特異性に基づき分類し,各抗体の頻度,関連する臨床像を追求した。(3)抗Jo-1抗体の免疫学的性状の分析:抗ARS抗体の代表である,抗Jo-1抗体の対応抗原HisRSを免疫吸着カラムにより精製し,次に(a)S.aureus V8 proteaseなどによるpeptide mapping,(b)O'Farrellの2次元電気泳動による分画,を行い抗Jo-1抗体の認識部位を調べた。【結果】(1)抗HisRS-PM/DM 18,OL4;抗GlyRS-PM/DM6,IIP5,RA1;抗AlaRS-IIP4,SSc2,抗ThrRS-PM/DM3,OL2;抗IleRS-PM/DM2例を見い出した。(2)抗His-,抗Thr-,抗Ile-RS抗体陽性全例に筋炎を認めたが,抗GlyRS(50%),抗AlaRS(0%)であった。(3)抗HisRSの2例以外,間質性肺炎を全例に認めた。(4)多関節炎は抗AlaRS(67%)以外,高頻度(>90%)であった。(4)Jo-1蛋白は43から14kDaの7ペプチドに分割され,抗Jo-1抗体陽性7血清は同様の反応性を示した。HeLa由来50kDaJo-1蛋白のpIは,6.8,7.3,7.5,で,抗Jo-1抗体陽性血清間でこれらのペプチドとの反応性に差はなかった。【結語】抗ARS抗体は,筋炎,間質性肺炎,多関節炎と関連するが,その特異性で関連症状の頻度が異なっていた。詳細な免疫学的性状と臨床像との関連の追究が今後の課題である。
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