Txk蛋白に対する抗体を作製する目的でヒスチジンタグ融合蛋白発現ベクターpQE-32ベクターに翻訳開始点と同一フレーム上に存在する5'末端非翻訳領域のストップコドンを欠失させたTxkのcDNAをフレームをあわせて挿入しJM109およびBL-21大腸菌株に導入したが、IPTGで発現誘導しても完全長のリコンビナント蛋白の発現を認めることができなかった。そこでRT-PCRで増幅したTxk cDNAをグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)融合蛋白発現ベクターに組み込み、JM109やBL-21等のK12株以外のTOPP-3大腸菌株に導入しIPTG誘導して発現させたところ、C-末端キナーゼドメインに対する抗Txkペプチド抗体を用いたウエスタンブロット法で認識可能なリコンビナント蛋白を得ることができた。現在、このリコンビナント蛋白で免疫して抗体を作成中である。抗Txkペプチド抗体を用いて免疫組織染色を行ったところT細胞株であるJurkar細胞ににTxk蛋白の発現を認め、B細胞株であるRajiにはTxk蛋白の発現は認められなかった。さらにRT-PCR法でもB細胞株にはTxk mRNAは認められないことも確認している。またTxkには核移行シグナルが存在するが、細胞内の局在場所は細胞質であることも認めた。Th2型疾患である気管支喘息患者で健常者と比較してTxk陰性細胞が増加している傾向が認められたが現在さらに検討中である。TxkのアンチセンスODNを作製してTh1及びTh0型T細胞に対する効果を検討したところ、抗原刺激に伴うTh1型サイトカインであるインターフェロン-γの産生を選択的に抑制した。また、末梢血T細胞を用いてPHAで刺激し産生されるインターフェロン-γもTxkアンチセンスODNの添加により抑制されたがセンスODNは影響を与えなかった。Th2型サイトカインであるIL-4の産生にはアンチセンス、センスODNともに影響を与えなかった。このことから、TxkはTh1型T細胞に特徴的なサイトカインであるインターフェロン-γの産生に直接かかわっている可能性が示唆された。
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