Txk分子は、Th1型T細胞と休止期T細胞(末梢血T細胞)に発現しているがTxkに対するアンチセンスODNを用いて、T細胞のTxk分子の欠失を試みたところ、Th1型細胞クローンでは抗原刺激に伴うINF-γの発現を著名に抑制したが末梢血T細胞のINF-γ産生は部分的にしか抑制しなかった。またTxkを発現しているT細胞株であるJurkat細胞はCon A刺激でもINF-γを微量しか産生せず、以上のことからTxk分子のINF-γ産生における役割が末梢血やJurkat細胞とTh1型T細胞で異なっている可能性を示唆しており、末梢血T細胞よりもThl型に分化したT細胞のINF-γ産生に重要な役割を果たしていると考えられる。Txk分子の役割を明確にするためにTh1型T細胞を用いて検討を行う必要があるが、T細胞クローンでは解析のための十分な細胞数が得られない。T細胞クローンを用いないでTxk分子の役割を解析する手段として遺伝子欠損マウスの作成が必要と考えられる。そこで、遺伝子欠損マウスの作成を試みるため、まずTh1型T細胞の分化の鍵を握る分子であるIL-12の欠損マウスの作成を試みた。ES細胞は129系マウス由来のR1細胞とC57BL/6由来のBLIII細胞を使ってIL-12p40遺伝子のターゲッティングを行った。R1細胞からは1個、BLIII細胞からは5個の相同組換クローンを得た。これらのクローンを使ってES細胞キメラの作成を試みたところ、R1細胞クローンから寄与率30%程度の雄キメラマウス1匹が得られた。このキメラマウスから子供を得たが、ターゲッティングされた遺伝子座を有する産仔は0/42と認められず生殖細胞系へのES細胞の寄与は認められなかった。また、BLII細胞クローンを用いたES細胞キメラは現在作成しているが、出産後喰殺してしまい得られていない。現在、寄与率の高いキメラマウスの作成と帝王切開によるESキメラマウスの救済を検討中である。
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