1) Comparative Genomic Hybridization (CGH)法による染色体異常の検討:現在まで、膵疾患を疑いERCPを施行した30例において膵液を採取し、細胞診を行うとともに、DNA抽出を行い、CGH法の準備段階にある。 2) TGF-β1の膵癌における役割の検討:現在まで、手術によって得られた膵癌組織21例と慢性膵炎13例、組織学的に正常であった膵組織5例のパラフィン包埋組織においてTGF-β1とそのI型レセプター、II型レセプターの発現を、それぞれ、ポリクローナル抗体を用いて免疫染色にて検索し、比較検討した。その結果、正常膵組織では、膵管上皮でTGF-β1とレセプターの発現を認めたが、間質細胞では認めなかった。膵癌の癌細胞と慢性膵炎の膵管上皮細胞においては、TGF-β1とレセプターの免疫染色陽性細胞数は同程度に認められ、全て同時に発現を認めた例もそれぞれ81.8%と76.2%と同程度であった.間質細胞におけるTGF-β1型レセプター発現は膵癌において、慢性膵炎に比し高い発現傾向が認められ、特にII型レセプターの間質発現は膵癌において有意に高かった(p<0.05)。間質におけるTGF-β1とレセプターの同時発現例は。膵癌で57.1%と慢性膵炎で40%であった。この実験結果から、TGF-β1とそのレセプターの膵癌間質での高頻度の発現は、癌間質反応による線維化(desmoplasia)と炎症による線維化の相違を反映している可能性が示唆された。このように、TGF-β1とそのレセプターが膵癌間質において強く発現していることを明らかにしたが、TGF-β1によって抑制されている可能性のあるMnSODについては、現在同一症例において免疫染色にて蛋白の発現とRT-PCRによってmRNAの発現を検索中である。
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