(1)野生株(2)デキサメサゾン処理(3)アクチビンA処理(4)アクチビンA+ベータセルリン処理したAR42J細胞から総RNAを抽出し、mRNA Differential Display法を用いて発現レベルの変化する遺伝子を同定し、その塩基配列を決定した。ノザンブロットを用いて発現レベルの変化を時間的、量的に詳細に検討し、その中で膵の分化に深く関与する遺伝子を(2)より11個、(3)より7個、(4)より20個同定した。情報伝達に関与する蛋白、膜蛋白、分泌蛋白、細胞骨格構成蛋白等の既知の遺伝子の他に未知の遺伝子も数多く得られた。 膵の分化を調節する情報伝達系はほとんど解明されていないが、AR42J細胞のインスリン産生細胞への分化はMAPKKの阻害剤PD098059によって抑制された。すなわち膵内分泌細胞への分化にはMAP kinase cascadeの情報伝達系が重要であることが示唆された。そこで、AR42J細胞がインスリン産生細胞へ分化する過程で発現レベルが上昇する(4)より得られた20個の遺伝子の中でPD098059によって発現が抑制されるものは分化に深く関与していると考えられ、ノザンブロットで検討したところ13個の遺伝子の発現が抑制された。この中で未知の遺伝子は5個あり、その中でも特に変化の著しい3個の遺伝子をcDNAライブラリーよりクローニングした。2個はbrain-specific sodium phosphate cotransporter、tricarboxylate carrier proteinとホモロジーをもつ遺伝子であり、1個は全く未知の遺伝子であった。現在これらの遺伝子がコードする蛋白の機能解析を進めている。
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