我々はC型肝炎ウイルス(HCV)1b感染において、NS5A蛋白の限定された領域(ISDR:interferon sensitivity determining region)のアミノ酸変異によりinterferon感受性が増大することを報告してきた。この臨床的観察はNS5A蛋白がinterferon作用の発現を抑制しうることを示唆している。今回の研究ではNS5A蛋白によるinterferon作用の抑制機序を解明する目的で、NS5Aによる細胞内interferon signal伝達系への影響を解析した。まずinterferon signal伝達を定量的に解析するためにinterferon誘導蛋白である6-16geneのpromoterをcloningし、6-16promoter制御下にluciferase geneを発現するreporter vector(6-16-luc)を作成した。このreporter vectorをCMV Enhancer/Promoterの下流にHCV-NS5A遺伝子を組み込んだ発現vector(pCI-NS5A)、およびtrasnfectionのcontrolとしてのLacZ発現vector(pSV-b-gal)と共にlipofection法でHela細胞にco-transfectionした。NS5A遺伝子を組み込まないbackbone vector(pCl-neo)をnegative controlとした。48時間後にinterferon alpha 2b 1000IU/mlを添加し、4-8時間培養後にluciferase活性を測定した。さらに恒常的にNS5Aを発現するHela細胞を作成、6-16-lucをtransfectionし同様の解析を行った。その結果6-16-lucをtransfectionしたHela細胞ではinterferonによりluciferase活性が誘導されたが、NS5Aをtransientに発現させることにより誘導されるluciferase活性は抑制された。ISDRに変異を導入すると、この抑制効果は減少した。NS5Aを恒常的に発現する細胞においてもinterferonにより誘導されるluciferase活性は抑制された。すなわちHCV-NS5A蛋白はinterferon stimulated response element制御下のreporter geneの発現を抑制し、その抑制効果はISDRの変異により減弱することが明らかとなった。従ってNS5A蛋白によるinterferon治療抵抗性の機序として、細胞内interferon signal伝達抑制機構が存在することが示唆された。
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