S-アデノシルメチオニン(SAM)合成酵素(メチオニン-アデノシル転移酵素 MAT)には肝臓型と、全ての臓器に存在する非肝臓型の2種のアイソザイムがある。非肝臓型が、肝類洞壁細胞で強く存在し、特に星細胞(伊東細胞)内ではこの非肝臓型のみ発現していることから、97年度は、星細胞が肝の線維化と共に機能、形態とも変化すること、形態変化には細胞骨格と低分子量GTP結合蛋白質の関与が大きいことを考慮して、ラット部分肝切除後の再生肝から分離した星細胞の本酵素の発現は、肝切後1日目より増加していること、低分子量G蛋白質のメチル化が4日目以降徐々に増加していることを明らかにした。今年度は、再生肝から分離した星細胞内で、経時的に発現変化しているマトリックス成分や、細胞骨格成分、マトリックス分解酵素などの発現を詳細に検討した。今年度の研究によって得られた新たな知見は以下の如くである。 1. 肝切除後のラット肝臓から経時的に分離してきた星細胞内の、各種蛋白質の発現をRT-PCRによって調べたところ、一部の細胞外マトリックス成分、マトリックス分解酵素とそのインヒビターの発現変動から、細胞外マトリックス合成分泌と分解調節と、低分子量G蛋白質の発現が関与していることが示唆された。 2. 肝切後低分子量G蛋白質のメチル化がピークになる6日目のラット肝より従来の方法により星細胞を分離し培養系に低分子量G蛋白質の特異的なメチル化阻害剤を入れて培養したところ、細胞の接着、及び、星細胞に特徴的な細胞質突起が認められなかった。 以上の結果は現在投稿準備中である。現在、さらにヒト肝星細抱培養株を用いて、低分子量G蛋白質のアンチセンスを導入して、細胞の変化を検対中である。
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