C型肝炎で高率にみられるとされている多中心性再発の機構を解明するため、まず、硬変肝の再生結節におけるp53蛋白発現とその遺伝子変異について検討した。 対象は肝硬変症例7例より得た再生結節56結節と肝疾患以外で死亡した2剖検例から得た肝4検体、計60個とした。免疫組織染色は抗p53モノクローナル抗体DO-1を一次抗体として用いた。免疫染色の判定は肝細胞の10%以上の核が染色されたものを陽性とした。PCR法はパラフィン包埋切片より再生結節を顕微鏡下に選択的に切り出してDNAを抽出し、p53 exon5をtargetとしPCR法を行った。得られたPCR産物からDirect sequenceを行い変異を検討した。 対象とした全ての肝組織において免疫染色上p53蛋白の発現は陰性であった。Direct sequenceによる検討では、肝硬変56結節中12結節(21.4%)においてp53 exon5に変異がみられた。一方、肝疾患以外の症例に変異はみられなかった。アミノ酸レベルでの変異は肝硬変56結節中6結節(10.7%)に認められた。p53変異(十)の再生結節3結節、変異(-)の再生結節2結節、変異(-)の非肝疾患2検体でsubcloningを行ったところ、全てにおいてwild typeとmutant typeの両者が検出された。mutant typeの頻度は再生結節で8.3-46.2%とさまざまで、非肝疾患においてもmutant typeが検出された。今後、これらのmutantの種類や他のexonにおける変異についても検討を行いたい。
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