研究概要 |
ラット近位小腸を大量切除すると、残存小腸では絨毛の増大、腸管内腔の拡大など吸収面積を増加させる変化、すなわちadaptationが生ずる。このとき、吸収上皮細胞では細胞増殖が亢進するだけでなく、細胞単位での各種栄養素の吸収能増加が見られる。しかし、吸収上皮としてのグルコース吸収と細胞のエネルギー源として必要なグルコース代謝との関係は明らかではなかった。そこで、ラット小腸の50%切除を行って1、3、5、7日後に残存小腸を取り出し、グルコース代謝を促進するFru2,6-P2の合成酵素であるFru 6-P,2-Kinase:Fru 2,6-bisphosphataseと、グルコース能動輸送担体であるSGLT1のmRNA発現の経済的変化を測定している。SGLT1mRNAの発現は切除後より増加し、単位面積あたりのグルコース吸収も増加する。しかし、Fru6-P,2-Kinase:Fru 2,6-bisphosphataseは、現在までに小腸上皮細胞で発現しているアイソザイムの同定がなされていないため、ノーザンブロットでmRNAの検出が困難であり、改良を加えている。また、Fru 6-P,2-Kinase:Fru2,6-bisphosphataseの酵素活性も低いため、検出感度を上げる方法を検討中である。 Caco-2細胞増殖におけるFru 6-P,2-Kinase:Fru 2,6-Pase、SGLT1のmRNA発現の調節を検討するため、Caco-2細胞の増殖期とconfluent期、それに続く吸収上皮細胞に分化する時期において、SGLT1のmRNAを測定しているが、吸収上皮細胞に分化しはじめてようやくSGLT1活性がみられるため、他の細胞でも検討する予定である。
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