〈遺伝子導入に関する研究〉 (1)同種指向性レトロウイルスレセプター(MCAT1)遺伝子をRT-PCR法を用いてクローニングし塩基配列を決定した。(2)SV40及びαフェトプロテイン(AFP)遺伝子プロモーターの制御下にMCAT1遺伝子を挿入した発現ベクターを作製し、これを導入したヒト肝癌、非肝癌細胞を樹立した。(3)これらのMCAT1遺伝子導入細胞において、本来ヒト細胞には感染しないβGalactosidase発現レトロウイルスを感染させたところMCAT1発現により同種指向性レトロウイルスによる遺伝子導入が可能となり、またMCAT1遺伝子をAFPプロモーターの制御下におくことで肝癌特異的な遺伝子導入が可能であった。 現在、アデノウイルスベクターを作製中であるが、今後in vitro及びin vivoにおけるアデノ-レトロウイルス二重感染法による肝癌特異的な遺伝子導入に関して検討する予定である。 〈腫瘍ワクチンに関する研究〉 単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-tk)遺伝子及びインターロイキン2(IL2)遺伝子を組み換えレトロウイルスを用いてマウス腹水肝癌細胞に導入した。これらの細胞をマウスに接種し腹水を形成させた後、ガンシクロビル(GCV)を投与したところ、HSV-tk/GCVのみでは腹水肝癌は容易に再発し死亡したが、IL2を併用することで腹水は消失し長期生存した。また、HSV-tk/GCVとIL2を併用した腹水肝癌マウスでは背部皮下に接種した肝癌細胞に対する癌ワクチン治療効果が認められた。
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