癌細胞の転移に関与するとされる各種の糖鎖構造を有し、一方では抗接着作用を示すMUC1ムチンについて、本研究を通じて以下の点について明らかにした。 1) 胃癌細胞株MKN74にMUC1 cDNAを導入したトランスフェクタントは、in vitro浸潤能および運動能の亢進、細胞外基質への接着性の低下を示すことを明らかにした。 2) 同トランスフェクタントを、ヌードマウス皮下に移植すると、増殖能の亢進、および浸潤性の獲得を示した。また、一部のマウスでは肺転移巣が見い出された。 3) 大腸癌細胞株HT29はSCIDマウスの脾内に移植すると肝転移を示すため、本細胞のMUC1トランスフェクタントを新たに作製した。現在、本トランスフェクタントの自然肝転移能と、それに及ぼす糖鎖の影響について検討を加えつつある。 4) 内視鏡的粘膜切除術および外科手術により摘出された大腸癌組織について、MUC1ムチンの発現を、抗MUC1コア蛋白抗体および一部シアル酸の関与する抗MUC1抗体を用いて免疫染色を行った結果、リンパ節転移との関連を見い出しておりさらに検討中である。
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