消化管運動機能の解析を以下のように行った。平成10年度に行う、バロスタットを用いた緊張性運動機能の解析と比較検討するために、今年度は収縮性運動機能を中心に検討した。 gastro-esophageal reflux disease(GERD)症例の病態の解明を目的に、食道内圧、下部食道括約部(LES)圧、pH、胃排出能測定を行い、合わせて塩酸イトプリドの効果についても検討した。対象は胸やけ症状を有するが上部消化管内視鏡検査にて異常所見のないGERD症例とし、健常者と比較した。方法は経鼻的にSleeve sensor 付8 lumen catheterを挿入し、infused catheter法にて食道内圧とLES圧測定を行い、同時に胃食道内pHを測定した。さらに食事前後の一過性LES弛緩反応(TLESR)の変化を観察するため、検査中にアセトアミノフェンを混じたOKUNOS-Aを飲用させ、45分後の血中アセトアミノフェン濃度を測定することで胃排出能を評価した。GERD症例には同様の測定を塩酸イトプリド投与後にも行った。 その結果、LES圧はGERD症例で食後2時間には有意に低下していたが、塩酸イトプリド投与にて改善する傾向にあった。酸逆流時間比率はGERD症例に高く、特に食後に増加したが、塩酸イトプリド投与にて改善する傾向にあった。TLESRはGERD症例では食後に増加していたが、塩酸イトプリド投与にてTLESRの回数が減少する症例もみられた。胃排出能に関してはGERD症例の遅延例で塩酸イトプリド投与にて改善を認めた。 以上のように、GERD症例では健常者に比べTLESRが食後に有意に増加しており、これに伴う酸逆流が胸やけ症状の発現に関与していると考えられた。また塩酸イトプリド投与にてTLESRの回数が減少し自覚症状が改善する症例もみられ、GERD症例に有効と思われた。
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