研究概要 |
近年、消化管の形態診断の発達とともに、形態のみでは診断が困難な疾患にも関心が集まるようになった。これらにはGERD(gastro-esophageal reflux disease),NUD(non-ulcer dyspepsia),IBS(irritable bowel syndrome)などの疾患が含まれ、消化管の運動異常が一因と考えられているが、従来その解析は困難であった。我々はこれらの疾患の病態を解明するために、これまで消化管の蠕動運動の解析を行ってきたが、今回はバロスタットを用いて消化管の緊張性運動や内蔵知覚の解析を行った。 バロスタット本体、コンピューター、解析ソフトウェアとともに、今回は直腸用一本と食道用二本のカテーテルを準備した。特に食道用のカテーテルの作成には、海外の研究者に直接連絡を取り、詳細を理解した上で我々独自に作成した。 健常者の検討では、胃内のバルン内圧を徐々に増加させた場合、内圧が8mmHg前後に達すると胃上部に急激な胃弛緩作用、すなわちgastric adaptive relaxation(GAR)が観察された。また食事負荷では、食後の胃上部に急激な弛緩反応が観察され、胃内圧の上昇が抑えられた。NUD患者における食後早期の腹部膨満感症状は、このような胃上部の弛緩が適切に行われていない可能性が考えられた。 今後はNUDやGERD症例をより多く検討し、その病態を解明したいと考えている。また薬剤投与、H.Pyloriの除菌、食道静脈瘤硬化療法の各々の前後における、胃緊張性と内蔵知覚の変化を検討したいと考えている。また大腸では消化管の緊張性運動の検討を始めたばかりであり、今後IBSなどの病態の解明を目指したいと考えている。
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