これまで、大腸上皮細胞はnon-professional APCとして機能しているといわれてきたが、costimulatory signalを欠く正常腸管粘膜内のT細胞はクローン麻痺(clonal ancrgy)の状態にあり腸管腔における外来および自己抗原に対しては不活化状態にある。一方、潰瘍性大腸炎などの炎症粘膜ではcostimulatory signalを発現する活性化T細胞が多数出現し、その病態に関与していると推測される。我々は、潰瘍性大腸炎患者生検検体を用い、潰瘍性大腸炎の炎症性大腸上皮におけるCD86の発現を証明し、病態形成における関与を明らかにしてきた。また、大腸上皮由来の細胞株HT29-18-N2においてもCD86分子の発現を認め、さらにIFN-γで刺激してCD86分子を発現したHT29-18-N2をeffectorとしてCD4陽性細胞と共培養を行い、その細胞増殖活性の上昇を認めた。 今回、CD86分子を発現した潰瘍性大腸炎大腸上皮をeffectorとして用いて同様に検討し、CD4陽性細胞の細胞増殖活性の上昇を認めた。さらに共培養開始時にブロッキング抗体を添加し検討を加え、抗CD86抗体の添加により細胞増殖活性は著明に抑制され、以上よりこの増殖反応がCD86を介した反応であることが確認された。 今回の結果より、潰瘍性大腸炎炎症部の大腸上皮にCD86が発現し、costimulatory moleculeとして粘膜内T細胞の活性化および炎症の慢性化に働くことが示唆された。消瘍性大腸炎の病因は未だ不明の点が多いが、今回、新たに病態形成、慢性化の一つとしてcostimulatory molecule CD86の関与が明らかになり、本症の病因解明の一助になると考えられる。今後さらに大腸炎モデルにおいてCD86のanalogueであるCTLA-41g投与による腸炎発症の抑制効果の検討を行い、潰瘍性大腸炎に対する新しい免疫統御療法の開発へつなげたいと考えている。
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