研究概要 |
1. 部分肝切除モデルの確立とmetabolic study 肝機能をあらわすaminopyrine beath testから算出したABT-k値は,術前sham群2.10±0.07,2/3肝切除群2.03±0.04から,術後一日目にそれぞれ2.01±0.07,1.22±0.05と2/3肝切除群で有意に低下し,Naバランスは,sham群0.29±0.10,2/3切除群0.42±0.04mmol/dayから,術後1日目にそれぞれ0.62±0.05、1.33±0.09mmol/dayへと2/3肝切除群で有意に増加した.また,FENaは2/3切除群で0.38±0.02から0.23±0.03と有意に低下し,Naバランスの増加が,尿細管でのNa再吸収増加に起因することが示された,このことは,肝薬物代謝酵素活性の指標であるABT-kが一定の閾値を下回ると,腎尿細管でのNa貯留が生じるといういわゆるCriticalfunction threshold theoryに一致する結果であった,仮説に掲げたNa輸送蛋白は腎皮質に存在するため,metabolicstudyでNa retentionが生じた当日(2/3部分肝切除術後翌日)の腎を摘出,皮質部分のみを切除し,液体窒素で急速冷凍したのちNa-K ATPase subunitの発現が変化しているかを検討した. 2. 腎Na輸送蛋白の検討 Na retaining kidney(2/3肝切除群)とnon-Na retaining kidney(sham群)の皮質から得られたplasma membraneをSDS PAGEに供し,ニトロセルロースに転写,処理後,anti-Alpha Na-K ATPase subunit monoclonal antibodyまたはanti-Beta Na-K ATPase subunit monoclonal antibodyと反応させ発色,感光させたところ,いずれの例からも96KD(alpha subunit),および55KD(beta subunit)に一致したバンドが観察された.そのdensityは2/3肝切除群とsham群で差はなく,hepatic massの減少によって惹起された肝機能低下に伴うNa retentionには,Na-K ATPase subunit蛋白の発現と関係のないことが示唆された.
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