研究概要 |
急性膵炎におけるN0(Nitric oxide)の意義については明らかではない。今回、実験急性膵炎モデルである、ラット closed duodenal loop(CDL)膵炎を用いて、CDL膵炎の発症・進展過程における膵組織中 iN0S(inducible Nitric 0xide Synthase)活性の免疫組織化学的変化を検討した。 Wistar系統雄性ラット(n=80)を用いてCDL膵炎を作成し、1)生食投与(NS)群、2)LPS投与(LPS)群:LPS3mg/kgを0,3時間後に静注の2群に分けた。各群について、経時的に膵組織像および膵組織中iN0S活性の変化を家兎抗iN0S抗体を用いた免疫組織化学染色(ABC法)を行い対比検討した。組織学的に、CDL作成6時間後および12時間後における炎症細胞浸潤、腺房細胞空胞形成、腺房細胞壊死は、LPS群においてNS群に比べて高度であり、LPS投与により膵炎は重症化した。iN0S免疫組織化学染色では、(1)正常ラットでは、血管内皮細胞にわずかにiN0Sの局在が認められた。しかし、腺房細胞、導管上皮細胞には局在を認めなかった。(2)NS群では、CDL作成3時間後以降ほぼすべての血管内皮細胞に強いiN0Sの局在が認められた。iN0S陽性炎症細胞は時間の経過とともに増加した。腺房細胞においてもiN0Sの局在が認められ、空胞形成、壊死に陥っている腺房細胞に多く認められた。(3)LPS群では、6時間後および12時間後において、iN0S陽性炎症細胞数、iN0S陽性腺房細胞数がNS群よりも多く認められた。 ラットCDL膵炎の発症・進展過程で、膵組織中にiN0S陽性炎症細胞が出現し、空胞形成・壊死を伴う腺房細胞に多くiN0Sの局在が認められた。従って、ラットCDL膵炎における膵組織中のiN0Sの発現は、膵炎の発症・進展に重要な役割を果たしていると考えられた。
|