肝細胞アデニル酸シクラーゼ・アイソフォームのゾーネーション 研究開始時は、ラット肝臓凍結切片を作製し、門脈周辺部および中心静脈周辺部の肝細胞を分離、これらゾーンよりmRNAを精製し定量的PCRを行い、各ゾーンのアデニル酸シクラーゼ(以下AC)アイソフォーム発現量を明らかにすることを計画していた。しかし、肝臓凍結切片よりゾーンを分けてmRNAを精製することが困難であった。このため、各AC特異的DNAプローブを作製し、in situ hybridization(ISH)法を用いて各ゾーンに発現しているACアイソフォームを明らかにすることに計画を変更した。 平成9年度に、ラット肝臓よりmRNAを精製しcDNAを合成、RT-PCRを行い、PCR産物のDNAシークエンスを行ったところ、肝細胞に発現しているACアイソフォームはType I、IV、V、VI、VIIであることを明らかにした。上記のRT-PCRには全てのACアイソフォームで相同性の高いCla、C2a領域に対するプライマーを用いた。これは、これらのプライマーが培養癌細胞などに発現するACアイソフォームを明らかにした既報で通常用いられたためである。ISHは、このPCR産物をプラスミドベクターにサブクローニングし、アンチセンスおよびセンスRNAプローブを作成して行った。TypeI、VIIは、アンチセンスおよびセンスプローブともにシグナルを認めなかった。TypeIV、V、VIは、アンチセンスプローブにて中心静脈周辺部にやや強いシグナルを認めた。しかし、センスプローブでも非特異的なシグナルを認めた。このため、各ACアイソフォームにより特異的なプローブを新たに作製する必要があり、各ACのオリゴプローブを作製し、再度ISHを行っている。
|