研究概要 |
TGFβは、肝細胞に対して強い増殖抑制効果を有する。しかし多くの肝癌細胞で、その細胞増殖抑制効果が減弱しており、TGFβに対する肝癌細胞の不応性は、肝癌の自律的増殖性にとって必須のことと考えられている。一方TGFβの研究は、最近その受容体やシグナル伝達物質であるSmadがクローニングされて急速に進歩してきた。また肝臓癌の病因として、臨床統計学的あるいはトランスジェニックマウスを用いた実験などからB型やC型肝炎ウイルスの関与が考えられることから、肝臓における発癌過程は、他の発癌機構と比較してユニークであると考えられている。したがって、肝癌におけるTGFβのシグナル伝達機構には、肝炎ウイルス等が調節している可能性など特異的なシグナル伝達経路が予想される。 本年度の実験計画 I. TGFβの各種肝癌細胞における生物活性の解析 1. ^3H-Thymidineの取り込みによるDNA合成能の解析 2. Rb蛋白のリン酸化能 3. p15^<INK4B>並びにPAI-1転写のルシフェラーゼ活性を用いた解析 II. 肝癌細胞におけるTGFβシグナル伝達の解析 1. TGFβ受容体,Smad2,3,4mRNAの定量並びに変異の有無の検索 2. ^<126>I-TGFβを用いたradioreceptor assay 3. Smad2,3のリン酸化能 4. Smad2,3,4の核移行の検索 5. 肝癌組織中での抗Smad抗体を用いた免疫組織化学染色
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