ヒト肝細胞癌組織におけるVEGF受容体flt-1、KDRの局在の検討の為免疫組織染色、in situ hybridizationを行った。ともに主に癌結節周囲間質の血管内皮細胞また癌組織内血洞内皮細胞に認められた。RNase protection assay法ではflt-1、KDRのmRNAの発現は非癌部肝組織に比べ肝癌組織で強い傾向にあった。低酸素条件下で肝癌細胞内に誘導される物質の同定の為にHLE、HLF、Huh7-3種類の培養肝癌細胞を通常酸素濃度および3%の低酸素濃度で24時間培養した。各々蛋白質を抽出、ポリアクリルアミドゲルに電気泳動後、銀染色を行い互いの蛋白質バンドを比較した。低酸素条件下で増幅誘導された蛋白質バンドの一つはVEGFであった。またいくつか増幅誘導された蛋白質のバンドを認めた。現在70から80kDa近辺のものに注目し、まずいくつかのVEGF以外の血管新生作用を持つ蛋白質について検討した。酸性FGF、塩基性FGF、PDGF、PIGF、TGF-αに対する抗体を用いてWestern blotを行ったがこれらの蛋白ではなかった。また、最近発見された血管新生に関与すると言われているangiopoietin-1、-2について検討を行う為これらに対する抗体の入手を試みている。また、上記同様の方法で肝癌細胞培養後mRNAを抽出しサブトラクション法を用いて低酸素条件下で誘導されたmRNAを拾い上げcDNAに変換後plasmid vecterへ導入、現在シークエンスを行いmRNAからの同定をも行っている。
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