原発性胆汁性肝硬変(PBC)の病態にアポトーシス(apotosis)がいかに関与しているかについては明らかではない。この研究では、PBCの胆管上皮細胞および肝細胞において、アポトーシスの一つのマーカーである核内DNA断片化とアポトーシス抑制蛋白であるBcl-2の発現を検討した。さらに、それらの細胞における核内DNA断片化とBcl-2の発現に対するウルソデオキシコール酸(UDCA)の効果についても検討した。35例のPBC肝、対照として16例の正常肝、17例のC型慢性肝炎肝を材料とし、核内DNA断片化の検出にはin situ nick-end labelingを、Bcl-2の評価には免疫組織化学を用いた。胆管上皮細胞のDNA断片化は、正常肝、C型慢性肝炎肝に比べPBC肝で有意に多く認められた(ともにp<0.05)。肝細胞のDNA断片化は、正常肝に比べPBC肝で有意に多く認められた(p<0.01)。Bcl-2は、胆管上皮細胞おいて、正常肝、C型慢性肝炎肝に比べPBC肝で有意に多く発現していた(それぞれp<0.05、p<0.01)。また肝細胞におけるBcl-2の発現も、いずれの対照群よりPBC肝に有意に多く認められた(ともにp<0.01)。UDCAは、胆管上皮細胞において、DNA断片化およびBcl-2陽性率を有意に減少させたが(それぞれp<0.05、p<0.01)、肝細胞においては有意な減少は認められなかった。PBCの肝胆管上皮細胞および肝細胞において、核内DNA断片化とBcl-2表出がともに多く認められたことで、PBCの病態へのアポトーシスの関与が示唆された。PBCの病態改善をもたらすUDCAの作用機序の一つとして、PBCの胆管上皮細胞の核内DNA断片化を軽減させることが考えられた。
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