末梢血中に出現するhAFPmRNA陽性細胞の変化を経時的に観察するために、肝細胞癌患者における肝切除術に際して、末梢静脈血、門脈血を採取し、hAFPmRNAの検出を試みた。総計34例の肝切除例のうち、術前で陽性であったものは約1/3に当たる12例であった。これらの症例のうち、術後に引き続き検出されたものは6例で、残る6例は検出不能となっていた。逆に術前陰性であった22例のうち、7例が術中または術後に陽性に変化していることが観察された。このような症例においては、術操作によって腫瘍細胞または正常肝細胞が末梢血中に播種している可能性が示唆されたが、門脈血での検出結果と末梢血における検出結果の間に不一致が認められること、陽性転化の時期が症例によって異なることなどから、はっきりした結論を出すのは困難であると考えている。また、持続陽性を示した正令の中に予後不良例が多く認められたが、観察期間中無再発の症例もあった一方で、持続陰性例で予後不良例も認められることより、周術期以降に関しても今後検討を重ねる必要が感じられた。一方、末梢血中からのhAFPmRNA発現細胞の分離については、基礎的検討として培養細胞を対照血に希釈して回収実験を行った場合はhAFPmRNAをRT-PCRにて検出することは可能であったが、希釈濃度については一定せず、標的遺伝子の選択を含めて再検討する必要も感じられる。臨床症例についても一部分離できた症例もあったが、回収数が不足しているために、追加検討には不十分であり、方法論の確立を今後急ぐ必要がある。
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