研究概要 |
門脈腫瘍栓を持ち、血中のAFPmRNAが反復して検出される男性肝癌患者より末梢血を採取し、セルソーターによって上皮細胞成分を抽出した。この分画における,AFPmRNAはもと.の末梢血に比較して高濃度に検出された。初代培養細胞は、明らかに血液細胞とは異なる形態をとっていた。この結果、末梢血中の肝癌細胞を分離することができたと考えた。分離された末梢血中肝癌細胞と、肝切除時に得られた原発巣との遺伝子発現の相違を、まずRT-PCRで検討したが、AFP、Albumin、p53、pRb、p16、p21については発現レベルに有意な差はなかった。northernblottingでも発現量に差は易いだしえなかった。このためスクリーニング的な手法を使用する必要があると考え、末梢血肝癌細胞から樹立した細胞株MS-1からmRNAを抽出しそ検索を追加した。differential displayによってMS-1由来mRNAと原発巣のmRNAを比較したところ、両者で発現が異なると思われる候補を相当数認めることができた。そこでこれらから代表的なものを選択して塩基配列寮決定することとしたが、再度MS-1由来mRNAの検討を行った結果、MS-1からのAFPmRNAの発現は極めて弱いことが判明した。改めて代表的な遺伝子発現の検討を行い、また培養細胞の形態などに関して観察を行った結果、MS-1はソーティングによって得られた肝癌細胞ではなく、線維芽細胞由来であることがわかった。由来した患者は既に手術を終えており、この症例を用いた検討は一旦終了せざるを得なくなった。今後も異なる症例を用いて研究を継続したい。 一方、手術前後でのAFPmRNAの変化に関する検討は継続して行っており、術後早期に陽性を示した症例は、短期間に再発所見を認める傾向を明らかにした。この知見に関しては現在論文を準備中であり、近く投稿を予定している。
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