研究概要 |
肺線維症におけるKL-6/MUC1ムチンの病態生理学的意義を明らかにする目的で、正常ヒト線維芽細胞株を用い、肺線維芽細胞に対する走化性の病態学的意義を更に明確にするとともに線維芽細胞のアポトーシスに対する作用について検討した。線維芽細胞に誘導されるアポトーシスに対するKL-6の効果について検討するために、まず米原らの方法に基づきIFN-γ1000U/mlの濃度で前処理(24時間)し、培地交換後、抗Fas抗体(CH-11,1μg/ml)を加えてアポトーシスを誘導する系で検討した。細胞死の判定はTUNEL染色およびDNAラダーの検出によって行った。この系で、ヒト肺線維芽細胞株はアポトーシスを誘導され、この効果はKL-6によって抑制された。さらに詳しく検討するためにWongらの方法に基づき培養線維芽細胞に抗Fas抗体、抗TNF-R1抗体、シクロヘキシミドを加えて刺激(24時間)し、アポトーシスを誘導する系で検討した。この系でもヒト肺線維芽細胞株はアポトーシスを誘導され、この効果はKL-6によって濃度依存的および時間依存的に有意に抑制された。アポトーシスを誘導された培養線維芽細胞におけるアポトーシス関連蛋白の発現についても検討した。その結果、c-myc、p53の発現はKL-6の有無に関わらず、変化を認めなかった。ヒト肺線維芽細胞株は無刺激(コントロール)時においてbc12を強く発現しているが、bc12についてはアポトーシスに陥った線維芽細胞は発現が低下していたのに対し、KL-6を作用させることにより、bc12の発現はほぼコントロールの状態にまで回復していた。ELIZAを用いて半定量的にも検討したが、アポトーシスを誘導された線維芽細胞においてbc12は感度以下にまで発現が低下していたが、KL-6を作用させることにより、コントロールの値にまで回復していた。これらのことから、KL-6は肺線維芽細胞のアポトーシスを抑制することによっても肺の線維化の促進に働くものと考えられた。
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