今年度は、当院倫理委員会によって承認された本研究に対する説明・同意書を提示し、参加同意の意思が確認された、慢性肺性心を伴った慢性呼吸不全例に対して、マスフローコントローラーを用いて5ppmから40ppmの低濃度一酸化窒素を、フェイスマスクを介して吸入させた。吸入の前後での酸素化能、循環動態の変化に関して血圧、心電図、SpO_2、動脈血液ガス、血中メトヘモグロビン、心房性ナトリウム利尿ペプチド、エンドセリン等のモニタリングを行ったところ、症例により吸入の前後で酸素化能、循環動態が著明に改善する症例と、ほとんど変化の認められない症例に分かれる傾向がみられたが、吸入により明らかに悪化する症例はみられなかった。しかし、何の要因が低濃度一酸化窒素吸入の効果を左右する因子であるのか検討を行おうとしたところ、検討するためには現時点では症例数が少なく困難なため、予定より多くの症例で研究を行うことが必要となってきた。このため当初の本研究の予定を一部修正し、次年度もフェイスマスクを介して低濃度一酸化窒素を吸入させる研究を継続し、この件に関して検討する必要性が生じてきた。 一方、在宅一酸化窒素吸入を念頭にした、鼻カヌラより酸素と低濃度一酸化窒素を混合し吸入させるシステムに関しては、予定より早く基本的なシステムが構築されてきたため、現在人に使用するための予備実験中である。
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