HuD抗原は、肺小細胞癌患者における癌性ニューロパチーの発症にかかわる免疫応答と癌抑制免疫応答の標的分子である可能性が指摘されている。本研究の目的はHuD抗原遺伝子DNAワクチン法により賦活化される液性免疫と細胞性免疫が肺小細胞癌及び脳神経組織に対してどのように作用するかをマウスを用いた肺小細胞癌モデル細胞による皮下腫瘍増殖抑制効果で評価し、さらに、惹起された免疫応答によって脳神経病変が引き起こされるか検討することである。2年間の研究期間において、マウスHuD抗原遺伝子発現プラスミドを用いたDNAワクチン法を確立し、HuD抗原に対して惹起された液性免疫および細胞性免疫が、ヒト肺小細胞癌モデル細胞であるHuD抗原発現マウス由来大腸癌細胞(Colon 26)からなる皮下腫瘍の発育抑制にかかわることを見い出した。しかしながら、DNAワクチン付加マウスおよびDNAワクチン付加後にヒト肺小細胞癌モデル細胞を皮下接種し、抗原の負荷をさらに加えたマウス大脳、小脳、延髄組織においても癌性ニューロパチーを示唆する所見が得られなかった。このことは、DNAワクチン法によって惹起される宿主免疫応答が、必ずしも神経系の炎症を引き起こす程強いものではなかった可能性を示唆する。より強力な抗腫瘍効果または癌性ニューロパチーのモデルを得るための免疫賦活化の改良を今後も目指していく予定である。
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