ヒト特発性間質性肺炎の発症には、TNF-αをはじめとする炎症性サイトカインが関与していると考えられている。本研究は、TNF-αを肺に特異的に高発現するSPC-TNF-αトランスジェニックマウスを用いて、特発性間質性肺炎の発症とTNF-αによって誘導されるサイトカインネットワークとの関連を、分子生物学的に解明することを目的とする。以下本年度の研究成果について記述する。 1)SPC-TNF-αトランスジェニックマウスは、生後早期から、進行性の間質性肺炎を発症した。肺に生じる組織学的変化を経時的に解析することにより、間質性肺炎の炎症を3つのステージに分類した。即ち、第1期はリンパ球が間質へ浸潤する。第2期はマクロファージの浸潤が加わる。第3期は肺胞上皮細胞の増殖と肺胞腔内へのマクロファージの浸潤が生じる。線維化の程度は第3期においても経度であった。従って、このトランスジェニックマウスは、間質性肺炎の比較的早期の段階を反映するモデルである。 2)上記3つのステージを、次にサイトカインネットワークの立場から解析した。第1期では、TNF-αの恒常的高発現に続いて、更に、IL-1β及びIL-6が高発現しており、第2期から第3期にかけてはIL-6が高発現していた。したがって、間質性肺炎の初期変化にはTNF-αとIL-6が深く関与していると考えられる。一方、TGF-β、PDGFの産生は第3期においても低下していた。以上の結果をヒト間質性肺炎と比較すると、線維化に関わるサイトカインの関与が明かでないと推測された。 3)SPC-TNF-αトランスジェニックマウスに緑茶抽出物を投与した。緑茶はTNF-αの遺伝子発現とTNF-αの遊離を抑制する。緑茶飲用による間質性肺炎の抑制およびサイトカインネットワークの抑制と組織変化の減少を指標に、間質性肺炎の新しい治療法および予防の検討を進めている。
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