中枢神経系に於けるヘム異化の意義:特に神経変性機構での関連について

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09770435
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 武田 篤 東北大学, 医学部・附属病院, 助手 (70261534)
• キーワード: heme oxygenase / oxidative stress / antioxidant / bilirubin / biopyrrins / Alzheimer disease / Parkinson disease / CSF

研究概要

ヘム異化系は強力な抗酸化物質であるビリルビンを産生することにより細胞の防御系と深く関わっていると考えられる。実際、アルツハイマー病脳ではHO-1発現が異常に増大していることが知られており、ヘム異化系とヒト神経変性疾患との関連を示唆するデータが蓄積されたきた。先に我々は、ヒトHO-1遺伝子内に非常に多型性に富んだマイクロサテライトマーカーを見いだし、正常人200〜300人とアルツハイマー病及びパーキンソン病患者それぞれ約100例についてこのpolymorphismの分布を調べたが疾患と関連する有意の変異は認められなかった。従ってHO-1変異が直接、両疾患の原因である可能性は否定的となった。現在、他疾患との関連を解析中である。またヘム異化系産物(biopyrrins)がELISA法により高感度で定量できるようになったためヘム異化系の機能を全体として評価できるようになった。この系を用いてヒト髄液中のbiopyrrins定量を進めたところ、髄液中biopyrrinsは血清中の値とは相関せず、また、髄液アルブミンや蛋白値とも全く相関しなかった。このことは髄液biopyrrins値は中枢での産生量を反映していることを示唆する。各種神経疾患髄液でbiopyrrins定量をすすめたところアルツハイマー病のみで統計学的に有意(p<0.001)のbiopyrrins上昇をみた(投稿中)。このことはアルツハイマー病脳で実際にヘム異化の亢進が起こっていることを示すとともに、biopyrrins定量がアルツハイマー病の補助的診断法として反応可能であることを示唆する。現在、各種の抗biopyrrinsモノクローナル抗体を用いてさらに詳細な解析をすすめている。

研究成果

• [文献書誌] Kimpara T, Takeda A, et al.: "Microsatellite polymorphism in the human heme oxygenase-1 gene promoter and its application in association studies with Alzheimer and Parkinson disease" Human Genetics. 100. 145-147 (1997)
• [文献書誌] Kimpara T, Takeda A, et al.: "The familial Parkinsonism locus on chromosome 4 and idiopathic Parkinson's disease in Japan" J. Neurol. Neurosurg. Psychiatry. (in press). (1998)
• [文献書誌] Mochizuki R, Takeda A. et al.: "Induction of midkine expression in reactive astrocytes following rat transient forebrain ischemia" Experimental Neurology. 149. 73-78 (1998)
• [文献書誌] Higuchi S, Arai H., Matsushita S. Takeda A, et al.: "Mutation in the alpha-synuclein gene and sporadic Parkinson's disease, Alzheimer's disease and senile dementia of the Lewy body type" Experimental Neurology. (in press). (1998)