研究概要 |
本研究では高い時空間分解能を持つ脳磁図を用い,作業記憶における情報処理の機構を時間的,空間的に解析することを目的とした.本年度はこれまでの研究をさらに進め,2種類の処理過程を同時に遂行する“dual task"を考案し,それに伴う事象関連磁界について検討した. 【対象と方法】健常成人8名(男4名,女4名)を対象とした.122チャンネルヘルメット型MEG(Neuromag社製)を用いて,単語の対連合学習とカテゴリー分類課題を同時に処理する場合の事象関連磁界を測定した.時間系列上のピーク潜時において,電流双極子モデルを用いて信号源推定を行った.またMRI(Signa Advantage,GE Medical System,1.5T)を用いて,連続スライス厚1.5mmのT1強調MRI画像を同一対象について撮影し,立体画像を再構成した.コンピューター上でMRI立体画像と信号源とを重ね合わせ,時間の流れに沿って信号源の解剖学的位置がどのように変化していくかを検討した. 【結果】150ms前後で視覚誘発磁界を認め,400ms前後,600ms前後に単語の意味処理に関連すると推定される磁界がみられた.これらの磁界は単語対が意味的に無関連な場合に振幅が増大する傾向にあったが,さらに事前の対連合学習の影響も認められた.後2者の電流双極子は主として左前頭側頭葉に推定された。 【考察】言語刺激を用いた“dual task"の作業記憶課題においては,左前頭側頭葉の関与が示唆された.
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