目的:RA410は培養アストロサイトでクローニングされた小胞体輸送関連蛋白で、サイトカインの産生放出に関与していることが示唆されている。しかしながらRA410の脳内動態およびその機能については全く不明であり、特にin vivoにおいて実験的に検討した報告はない。本研究ではRA410の脳虚血負荷後の脳内動態および発現細胞を検討し、脳梗塞形成過程においてRA410が如何なる役割を演じているかを検討した。 方法:実験には雄性ラット(体重280-320g)を用いた。45mg/kgネンブタール麻酔下にてナイロンモノフィラメントを用いて左中大脳動脈領域の脳虚血モデルを作成した。虚血時間は2時間とした。再潅流直後、15分、30分、1時間、3時間、24時間後に4%パラフォルムアルデヒドにて潅流固定し、免疫組織化学を用いてRA410の発現を検討した。さらに発現細胞の同定のために同一切片や連続切片をMAP2染色、GFAP染色を用い検討した。 結果:sham control群ではRA410の発現は大脳皮質および線条体の神経細胞に弱くほぼ均等に観察された。虚血再潅流30分後には、梗塞巣の中心部のMAP2の染色性が低下し始めた部位に一致してRA410の軽度の発現がグリア細胞に観察された。この発現は再潅流6時間後には消失した。再潅流6時間後にはMAP2の染色性の消失部位に一致してRA410は大脳皮質の神経細胞に高度に観察された。 考察:以上の所見は、RA410は梗塞形成過程でのストレス応答としてサイトカインなどの活性蛋白分泌に関与する蛋白ではあるが、その反応過程が従来報告されているストレス蛋白とは異なり、神経細胞死に至る過程の中で蛋白合成を伴う新たなタイプの蛋白質である可能性が示唆された。
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