目的:平成9年度に引き続きRA410の脳虚血時における脳内動態およびその機能について検討した。 方法と結果 (1)ラット左中大脳動脈一過性虚血により、虚血再潅流30分後には、梗塞巣の中心部のMAP2の染色性が低下し始めた部位に一致してRA410はグリア細胞に軽度発現した。さらに再潅流6時間後にはMAP2の染色性の消失部位に一致してRA410は大脳皮質の神経細胞に高度に観察された。 (2)in situ hybridization histochemistryを用いて、ラット左中大脳動脈一過性虚血負荷後のRA410mRNA動態を検討した。コントロール群では神経細胞に極く軽度にシグナルを認めた。虚血再潅流2時間後には虚血領域の大脳皮質のグリア細胞と神経細胞の両者でシグナルの増強が観察された。虚血再潅流6時間後には虚血中心部においてさらに顕著にシグナルは増強していた。虚血再潅流24時間後には虚血領域でシグナルは消失した。 (3)培養アストロサイトを用いアンチセンスによるRA410産生抑制が低酸素負荷後のアストロサイトによるサイトカイン放出に与える影響を培養液中に放出されるインターロイキン6(IL-6)をWestern blottingで測定することにより評価した。その結果、センス導入細胞においてはIL-6の培養液中ヘの放出が観察されたが、アンチセンス導入細胞ではRA410の発現は認められず、IL-6の放出もほぼ抑制された。 考察:以上の所見は、RA410は梗塞形成過程でのストレス応答としてIL-6などのサイトカインの活性蛋白分泌に関与する蛋白ではあるが、従来報告されているストレス蛋白、すなわちtrascriptiontはされるがranslationまでなされない蛋白とは異なり、神経細胞死に至る過程の中でさえ合成される蛋白質であることが示唆された。
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