細胞に導入した外来遺伝子の発現を安価な抗生剤であるテトラサイクリンで調節できるプロモーター(Tetプロモーター)と転写活性化因子(tTA)の組合わせは、培養細胞レベルからトランスジェニックマウスまで広く応用されている。今年度は、ヒトグリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)を発現させるためのアデノウイルスベクターの構築に上記の系を利用し、構築したベクターAxCTnT-hGDNFを動物実験へ応用した動物実験を行った。GDNFを発現させるためのアデノウイルスベクターAxCTnT-hGDNFを上記の系を利用し作成した。その感染細胞由来の培養上清についてのELISAによる測定ではAxCTnT-hGDNFに感染した細胞由来の培養上清中に高濃度のヒトGDNFを含むことが確認できた一方、コントロールウイルスに感染させた細胞由来の培養上清中のGDNFは測定感度以下であった。また、ラット黒質初代神経細胞に対する生存維持活性においても陽性と確認できた。続いて、マウスを利用したパーキンソン病モデル動物を作成し、AxCTnT-hGDNFがそのモデル動物に対して神経保護作用を有するかにつき検討した。神経毒であるMPTPの投与前にAxCTnT-hGDNFを線条体に投与することで、その神経保護作用の有無の検討はMPTPの投与後(1週間後)、マウスの線条体を左右別々に取り出し、それに含有されるドーパミンを比較することで行った。MPTPを用いると、線条体のドーパミン含量は正常マウスの10%未満に減少したが、AxCTnT-hGDNFの投与は統計学的な有為差をもって、AxCTnT-hGDNFを打ち込んだマウスの投与側の線条体にてドーパミン含量の減少を阻止することが確認できた。
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