最近、糖尿病患者、高血圧患者、心筋梗塞患者に対する運動療法の有効性が報告されている。しかし、腎機能障害患者における運動の安全性、有効性は未だ十分に検討されていない。今回動物モデルを使用して、腎不全下における運動の慢性効果について検討した。 8週齢高血圧自然発症ラット(SHR)に5/6腎摘(右2/3摘出、左全摘出)を行い腎不全を発症させ、無作為に非運動群、運動群、運動+薬物投与群の三群に分けた。運動群には10週から4週間トレッドミルによる中等度(20m/min×60min)の運動負荷を週5日行い、薬物投与群には同強度の運動に加えACE阻害薬またはAII受容体拮抗薬の腹腔内持続投与を行った。これまでの実験では、非運動群に比して運動群では腎機能を表すデータについては悪化の傾向を全く示さなかったばかりか、尿蛋白排出量においては有意な減少を認めた。その他の項目でも有意な変化は認めなかった。運動+薬物投与群では尿蛋白減少に加え、血圧の低下、血清コレステロールの低下を認めた。ACE阻害薬、AII受容体拮抗薬の間では明らかな差を認めなかった。 腎不全下における運動の慢性効果について検討したが、これまでのところ運動により悪化を示したパラメーターは全く認められず、明らかに尿蛋白排出量が減ったことに加え、更に薬物投与群では血液生化学データも改善の傾向が認められた。今後は、異なる強度での運動の慢性効果を調べると共に、エンドセリン受容体拮抗薬やカルシウム拮抗薬の効果についても検討する予定である。
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