研究概要 |
1.高コレステロール(CHOL)血症,特に高LDL-CHOL血症は冠動脈硬化症の最大の危険因子である.そこで冠動脈石灰化の発症と進展における高LDL-CHOL血症の意義を臨床的に検討する目的で,LDLレセプター遺伝子異常により生下時から著明な高LDL-CHOL血症を呈する家族性高CHOL血症(FH)ヘテロ接合体連続55例を対象に,超高速CTで検出した冠動脈石灰化と冠動脈造影所見との関係を検討し,年齢をマッチさせた非FH187例における結果と比較した.石灰化を指数として定量化したところ,FHが非FHよりも有意に大であり,この差は30〜40歳代男性において顕著であった.石灰化指数は総CHOL値と相関しないが,CHOLと年齢との積に有意な正相関を示した.以上より高LDL-CHOL血症は冠動脈石灰化の重要な促進因子と考えられた. 2.冠動脈リモデリングのメカニズムは不明である.そこで待機的冠動脈造影施行連続251例を対象とし,超高速CTで検出した冠動脈石灰化と血管造影所見とを対応比較し,血管リモデリングにおける石灰化の意義をその形態に注目して検討した.その結果,点状の石灰化は長軸および短軸方向に広がった石灰化よりも冠動脈狭窄を呈する率が有意に低かった(0.18vs0.32,0.40).またびまん性の石灰化は高率(0.56)に狭窄病変を伴っていた.以上より冠動脈石灰化の進展様式が冠動脈リモデリングに有意な影響を及ぼすと考えられた. 3.冠静脈洞血の採取および患者末梢白血球からのDNA分離は既に充分な症例数について終了している.現在これらの石灰化関連蛋白濃度を測定中であり,近日中にその結果がまとまる予定である.
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