研究概要 |
本研究の目的は、臨床サンプルあるいは自己免疫性心筋炎動物モデルを用いて心筋炎の免疫学的機序を明らかにし、新たな診断および治療法を検討することにある。本年度は、ICAM-1、LFA-1の発現と抗体による治療効果の検討、またリンパ球を選択的に減少させる新しい免疫抑制剤であるFTY720の治療効果の検討、さらに非筋型ミオシン重鎖で未分化な間葉系細胞で発現するSMembの発現に関して検討した。 心筋炎動物モデルは、既報のようにLewisラットに市販のブタ精製ミオシンを感作させ作成した。免疫染色により、心筋組織上にICAM-1、浸潤細胞上にLFA-1の発現を認め、抗ラットICAM-1およびLFA-1抗体の免疫直後からの同時投与(2mg/kg,3回/週)により、心筋炎の発症は有意に抑制された。またFTY720の免疫直後からの連日投与(0.1,0.33,1.0mg/kg/day)でも容量依存性に心筋炎の発症は抑制され、臨床的有用性が示唆された。SMembの発現は、免疫染色およびin situ RT-PCR法を用いて検討した。心筋炎動物モデルでは心筋炎発症前に炎症細胞浸潤に先行してSMembの発現を認め、心筋炎急性期では炎症細胞浸潤より広範囲に発現を認めた。免疫1年後の超慢性期では、病理組織上、著明な線維化を伴った拡張型心筋症様の病像を呈していたが、この段階でもSMembの発現は認めれらた。拡張型心筋症患者の心筋生検サンプルもしくは剖検時サンプルを用いた検討では、一部にSMembの発現を認めた。心筋炎の診断や拡張型心筋症の発症、進展の機序の解明にSMembが有用である可能性が示唆された。
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