マウスTSP1と同様に3'側非翻訳領域を削除したマウスTSP2cDNAをpcDNA3、pZeoSV2(+)およびLXSNの3種のベクターに組み込むことに成功した。プラスミドベクターを用いて、血管平滑筋細胞(A10)、血管内皮細胞(CRL)および線維芽細胞(NIH3T3)にTSP1、TSP2をそれぞれ単独で遺伝子導入し、6種の形質転換細胞から各5クローン合計30クローンを得た。クローン化した細胞についてcharacterizationを行うため、30クローンの細胞からRNAと蛋白を抽出し、Northern blottingとWestern blottingを行った。各形質転換細胞のどのクローンも無血清培地下および血清培地下いずれの条件下においても、TSP1あるいはTSP2は非導入細胞に比し、mRNAおよび蛋白ともに発現が増加していた。各形質転換細胞から、TSP1あるいはTSP2を最も強く発現しているクローン各2クローンずつ合計10クローンを培養し、過剰発現細胞として実験に供した。 WST-1キットを用いた増殖実験において、10%FCS下の培養条件下ではTSP1を導入したCRLは非導入コントロール細胞に比し増殖能が低下していたが、A10およびNIH3T3では増殖能は増強していた。また、無血清培地下で48時間培養後20%FCSで増殖刺激を加えると、TSP1を導入したA10およびNIH3T3では非刺激時に比し増殖能が増強したが、CRLにおいては有意な変化は認められなかった。Stable cellsを用いたこれらの結果は、LXSNを用いたtransient transfectionの実験系でも同様の結果であった。一方、TSP2を導入したA10およびNIH3T3では増殖能は、20%FCSの増殖刺激下で非導入細胞に比し増殖能が抑制されていた。 次年度、TSP2の更なる機能検索と、TSP1およびTSP2の同時導入による細胞機能の検討を行う予定である。
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