本研究は、超音波信号処理法の改良によって、超音波造影剤の抹消静脈からの投与でも心筋灌流を鋭敏に評価し得る新しい超音波診断システムを開発することを目的としている。さらに、本法によって冠側副血行循環を可視化し、冠血管新生療法の効果判定に応用することを目的としている。平成9年度は、主にシステムの充実と改良に重点を置き、本法の有用性を確認するための基礎的実験ならびに動物実験を行なった。1.超音波診断システムの開発:我々は超音波造影剤の心筋微小循環への到達度ならびに有効毛細血管密度は心筋組織からの超音波後方散乱強度(IBS)に比例した線形的輝度表示を行なうことによって定量的に評価し得ると考え、このIBSの定量計測を可能とするシステムの開発をすすめてきた。近年、時間分解能に優れたtime-domain方式IBS計測法が新たに米国で開発され、一部の市販装置にも搭載されるに至った。我々は新システムの臨床評価を行なうとともに、本法の臨床応用の基礎となるIBSの心周期性変動を詳細に検討し、これに関する新しい知見を発見した。この成績は日本超音波医学会学術集会ならびに米国心臓病学会で発表した。2.動物実験による超音波造影法を用いた冠側副血行循環の可視化の評価:冠新生血管の発達による心筋灌流の経時的変化を本法によって評価し得るか否かを、慢性虚血心動物で検討した。この研究の一部はUniversity of California at SanDiegoとの共同研究としても継続中である。超音波造影剤としては、本邦での認可が期待されているパルミチン酸添加ガラクトース結晶を用いて行ない、現段階で冠新生血管の発達による心筋灌流の経時的変化が確認されている。
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